日本妊産婦支援協議会 りんごの木

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「バースハピネスを考えるシンポジウム」     報告その1(2016年2月28日開催)

 キャンパスプラザ京都において、「バースハピネスを考えるシンポジウム〜母になるプロセスを支える〜」を開催しました。約140名の方が参加くださいました。医療従事者の方が7割、一般・学生の方が3割でした。医療従事者の方のうち約8割が助産師の方でした。講師の方とスタッフを含めると定員170名の会場はいっぱいになりました。


                        (写真提供:河合蘭)
●シンポジウムの内容●
寸劇:日本妊産婦支援協議会りんごの木
講演1:左古かず子
(あゆみ助産院院長)
講演2:竹内正人(東峯婦人クリニック副院長)
講演3:北島博之(大阪府立母子保健総合医療センター新生児科部長)
講演4:日隈ふみ子(佛教大学医療技術学部看護学科教授)
講演5:森臨太郎(国立成育医療研究センター政策科学研究部長)
全体討論
映像ドキュメント:河合蘭
(出産ジャーナリスト・フォトグラファー)

●バースハピネスとは●
 「バースハピネス」とは「母親と家族が赤ちゃんの誕生に感じる幸せに始まり、地域、社会に広がっていく幸せの輪」であると私達は考えます。母親と家族が赤ちゃんの誕生に幸せを感じることで、赤ちゃんが「自分は大切な存在なんだ」と幸せを感じ、幸せそうな赤ちゃんを見て母親と家族が・・・というように幸せの輪が幾重にも重なり、広がっていきます。バースハピネスは、出産という一点における幸せではなく、時間的にも空間的にも広がりを持つ幸せの連鎖です。
 私達は、どんな出産でも、母親と家族が赤ちゃんの誕生に幸せを感じることは母子や家族の幸せだけでなく、地域、社会の幸せにつながると考え、そのためには妊娠初期から出産、産後にかけて母親と家族が抱く不安に寄り添う医療、寄り添うケアが大切だと考えます。
 「バースハピネス」「寄り添う医療」「寄り添うケア」、どちらも耳に心地よい言葉です。そして、理念的に正しいことかもしれません。けれどもこの理念を(たとえどんな小さな地域であっても)社会制度にすることは簡単なことではないでしょう。

 
●鳥の目、聴く耳●
 新しい制度を作るのであれば、現在行なわれている医療・ケアがどのような法律や制度の枠組みのなかで行われているのかを理解し、限りある人材と予算を何にどう使い、それによってどのような効果がどのくらいもたらされるのかを示さなければなりません。「目の前で苦しんでいる人を救いたい」と目の前の人に真摯に向き合えば向き合うほど、全体を見失いがちになります。しかし、言わば鳥の目を持って、全体を見渡す必要があります。 また、自分たちの理念が正しいという強い信念を持つほど、異なる意見や小さな声に対して聴く耳を持たなくなりがちです。自分達とは異なる意見や小さな声を丁寧に聴き取っていく耳を持つ必要もあります。
 
●参加型シンポジウム●
 バースハピネスを実現する制度について、鳥の目と聴く耳を持って、参加者の方とともに考える、そんなシンポジウムを目指しました。
 まず、りんごの木のメンバーがシンポジウムの趣旨を表現したオリジナル劇を上演しました。笑いあり、涙あり、歌あり、踊りあり、の内容で「リアリティと関西色が織り交ぜられた脚本、熱意あふれる演技で、とてもわかりやすかった」と好評でした。

 
                           (写真提供:河合蘭)
 バースハピネスを実現する制度の叩き台として、出産施設基準7項目を提案しました。7項目は、講師の方のご意見を参考に、事前にりんごの木でまとめたものです。
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出産施設基準7項目

(下の写真をクリックすると拡大されます)
 
 左古かず子先生、竹内正人先生、北島博之先生、日隈ふみ子先生にそれぞれの立場から、提案された出産施設基準がバースハピネスを実現するために重要である理由と実現するための課題を話していただきました。次に、森臨太郎先生に、英国でのガイドライン作成における市民参画を例に市民が当事者として成熟することの重要性をお話しいただき、さらに、医療政策の立場から項目それぞれに対して、限られた人材・財源を踏まえた実現可能性について述べていただき、鳥の目の視点を具体的に示していただきました。
 全体討論に入る前に、参加者の方に項目それぞれについて「このような基準を策定することは、お母さんが愛情と自信を持って、赤ちゃんを迎えるために必要である」かどうかを評価してもらいました。「ぜんぜんそう思わない、あまりそう思わない、どちらともいえない、すこしそう思う、とてもそう思う」のうちどれに当てはまるかを評価用紙に記入・提出してもらい、集計結果を発表しました。さらに、全体討論の途中で2回目の評価を行ない、再び集計結果を発表しました。評価の集計を行なったのは、大勢の人の前で発言することが苦手な人や少数派の人の意見を全体の評価に反映させるためです。討論のあとにもう一度評価を行なってもらったのは、様々な意見に耳を傾けることで自分の意見を再考し、意見が変わることもあるということ、意見が収斂されていくこと、を可視化するためです。実際には、討論の時間が十分ではなかったため、1回目と2回目で劇的な変化は見られませんでしたが、討論が評価に影響を及ぼしたことは確認できたのではないかと思います。 

 
                     (上の写真提供:河合蘭)                           
 全体討論では、出産施設基準を実現するために乗り越えなければならない制度、人材、財源などの制約が存在すること、バースハピネスを実現するためには、出産施設だけでなく保健、介護、福祉、まちづくりなどの地域の生活基盤を含めて考えなければならないこと、資源が限りある中では必要なことを求めるより不必要なものを削っていくことが有効である、などが講師や参加者から指摘され、議論が深められました。 
 最後に、河合蘭氏にご自身がファン助産院で撮影された映像ドキュメントを上映していただき、母親と赤ちゃん、家族、助産師とでつくられる幸せの輪(バースハピネス)を参加者全員で共有しました。上映後に、河合氏は、緊急帝王切開のために助産院から病院に搬送されて赤ちゃんを迎えた家族や 21トリソミーの赤ちゃんを迎えた家族から、助産院での出産と同じようにバースハピネスを感じ、それを撮影された経験から、バースハピネスは決して正常出産だけを対象とした理念ではなく、全ての出産を対象にした理念なのではないか、と話されました。そして、出産に幸せを感じられないことで出産を控える人がいるように、出産が幸せなものでなければやがては人類が滅亡してしまう、そう考えればバースハピネスは人類にとって余剰物ではなく必需品であると話され、バースハピネスという理念を最後にもう一度確認する機会を与えてくださいました。
 では、バースハピネスという理念を実現するためにはどうすればよいのか? 今回のシンポジウムだけで結論が出る話では無論ありません。私達りんごの木は、シンポジウムで提示された鳥の目と聴く耳をさらに鍛え、社会を構成する責任ある市民として考え、また、多くの方と共に考え行動する機会を作っていきたいと思います。
 素晴らしい講演をしてくださった左古かず子先生、竹内正人先生、北島博之先生、日隈ふみ子先生、森臨太郎先生、そして観る人の心をケアしてくれるあたたかい映像ドキュメントを上映してくださり、当日の模様を写真撮影・提供してくださった河合蘭氏に深く感謝いたします。そして、お忙しい中、また遠方よりお越しくださった参加者の皆様、お手伝いくださったボランティアの皆様、ありがとうございました。

 

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